第三章 人形愛

一
「将様、こうですか?」
「そうだ。そこ、気持ちいいよ。」
「私もです、将様・・・。」
「最高だよ、ミレイ。君は僕の天使だ・・・。」
ミレイは自らの意思で将にまたがった。もとより将の体に合わせて作られた人形である。お互いの体がパズルのピースのようにぴたりと合った。今や、ミレイは自らの性感を得、将との行為を愉しむようになっていた。ミレイは、もとがラブドールである。魂を得たミレイは自ら将を望むようになっていた。
「ミレイ?」
「はい、将様。」
「・・・なんでもない。」
「どうしたんですか?変な将様」
「・・・いや、恥ずかしいから言わない。」
「えーっ、教えてくださいっ。何ですか?」
「好きだ。」
「えっ・・・。」
「あ・・・ごめん。」
「あ・・・。」
「迷惑、だよね。やっぱり。」
「あの、その。違うんです。私、嬉しくて・・・。なんだか、言葉が出てこなくなっちゃって・・・。」
「そ、そんな、無理しないでいいよ。」
「そんな、ホント嬉しい。将様。」
「ミレイ・・・?」
「お側に置いてください。お願いします。私、こんなことしか出来ないけど・・・お願いします。」
「ミレイ・・・。」

二
将は以前に増して、外出を拒否し、部屋にこもるようになった。徹でさえ、掃除のとき以外は将の部屋に入れなくなった。そして、その掃除がまた、大変であった。
散らかったティッシュと汚れた二人分の下着を処分しなくてはならない。そして、それは一日に十回を超えることもあった。徹は、現実の男女を知らないだけに、将に対して一種の嫌悪を覚えた。が、彼もこの仕事は長い。それは割り切って仕事に向かった。
それにしても、人形から愛液が分泌するとは不思議である。これほど可愛げのある人形なら、徹としても興味が湧いてくる。もっとも、二百万も出せないが。

三
徹の仕事は、今や将の事後の後始末ばかりになっていた。以前にも増して肉体労働の比率が上がっているものの、将に対して気を遣う類の仕事は減っていた。気は楽である。ミレイは、徹と将との散歩にもついてくるようになった。始めはぎこちなかった動きも、最近はずいぶん人間らしくなった。もとより最高の技術で作られた自動人形である。目立つ違いは充電ケーブルくらいであった。そして、そのケーブルがないときはほとんど人間と変わらない容姿をしていた。
人間の女の子のようにおしゃれをし、徹の付き添いはあるものの、将とデートし、愛し合った。将もミレイも、こんな時間がずっと続くと信じていた。

2 << 4 >>


Worksへ戻る
Main menuへ戻る